【演劇】演技のコツ:上手い演技とは?

演技のコツ

そもそも「演技が上手い」って、どういうことなんだろう……。

役者をやっていると、わからなくなるよね。

このページでは、演劇(ストレート)における演技の考え方を解説しています。

自分がどんな演技を目指していったら良いか、悩んでいる方の参考になるかもしれません。

この記事の結論としては、「上手い演技とは、『気にならない演技』に『1つ特長があること』」ということになります。

その理由と、具体的な考え方を説明していきます。

1.「上手い演技」って何?

演劇で役者をやっていると、「演技が上手くなりたい」と思うことがあるはずです。

しかし、「そもそも『上手い演技』ってなんだろう?」と考えると、はっきりした答えがわからず、いったい何を目指したら良いのかわからなくなってしまいがちです。

もちろん、誰にでも当てはまる正解なんてものはないのですが、目標となるビジョンがぼやけていると、上手くならないし、練習のモチベーションも上がりません。

ですので、できれば(間違っていたとしても)「これだ!」という正解を自分の中に持っておきたいものです。

ここでは、「上手い演技」とは、「気にならない演技」に「1つ特長があること」です、と言い切ります。

当然、違う答えがある方もいるでしょうし、プロのレベルになれば話は変わってきますが、多くの人はこう考えて良いと思います。

一つずつ説明していきます。

2.「上手い演技」の基本は「気にならない演技」

プロの劇団の面白い演劇を観たとき、まずどう思うでしょうか。

おそらく、「(話が)面白かった」じゃないかと思います。

他にも、演出が良かったとか、セットが素晴らしかったとか、そういった「目立つ部分」の感想が初めの方に出てきます。

それに対し、「あの役者は演技が上手かった」という感想は、比較的あとのほうに出てくることが多いです。

つまり、役者の演技の上手い・下手は、演劇全体の中では比較的気にならない部類に入るのです。

ただ、これは、プロであるため役者全員の演技が上手いからであって、プロじゃないと話が別です。

アマチュアの劇団や部活・サークルの演劇を観ていると、「演技が下手だな」と思うことは結構あります。

そして、下手な役者が目についてしまうと、その演劇自体が面白くないように感じられてしまいます。

まとめると、演技は「上手いと感動し、下手だと気になる」というよりも、「上手いと気にならなくて、下手だと気になる」のです。

レーダーチャートでイメージすると、次のような感じですね。ある一定のラインを超えれば、「気にならなく」なります。

一定以上上手ければ、超上手くても、まあまあ上手くても、多くのお客さんからの見え方は変わりません。

なぜなら、「気にならない」からです。

逆に考えれば、「気にならない」演技さえできれば、「上手い」と言えるということです。

上のグラフの「超上手い」にならなくても、「気にならないライン」を超えていれば良いのです。

3.「気になる」のは「悪い癖」

あまり演技が上手でない役者を見ていると、次のようなことが見受けられたりします。

  • 姿勢が良くない
  • 変な動きをしている
  • 台詞が聞き取れない
  • 表情が不明瞭

こういったものは、お客さんが「気になり」ますよね。

この「気になる」のは、基本的に「悪い癖」が原因です。

上の例の原因を挙げてみると、

  • 姿勢が良くない ← 猫背の癖
  • 変な動きをしている ← 無駄に手が動く癖 ゆらゆらする癖
  • 台詞が聞き取れない ← 日常生活での声量になってしまう
  • 表情が不明瞭 ← 日常生活での表情の大きさになってしまう

どれも、演技をするときに出てしまう癖や、日常生活で慣れてしまっている状態などが原因です。後者も、言い方を変えれば癖ですね。

このように、「悪い癖」が「気になること」につながるのです。

逆に言えば、癖のない動きや喋り方をする人は、上手い演技ができる傾向にあります。

「腹式呼吸ができているかどうか」のような、演劇的な技術はもちろん重要ですが、実はそれよりも、「悪い癖がある」ほうが、お客さんからすると「気になる」ポイントになります。

4.悪い癖の直し方

じゃあ悪い癖を直そう、となるのですが、癖は直すのがとても難しいものです。

なぜなら、癖とは「染み付いているもの」だからです。

たとえば、稽古中に猫背についてダメ出しを受けると、その場では直っても、しばらくすると戻ってしまいます。

そしてまた同じダメ出しを受けるのです。

染み付いているものを直すためには、それなりの時間がかかります。

そうなると、なかなか直らなくて、先が見えず、嫌になってしまうので、結局直らず演技が上手くなりません。

時間がかかっても、せめて「こうすれば直る」ということがわかっていれば、モチベーションを保てます。

癖を直すときの大事な考え方は、「『その癖がある状態』より長い時間、『その癖がない状態』をつくること」です。

「猫背」なら、おそらく普段の生活からずっと猫背なのではないでしょうか。

普段の生活、つまり1日のうち寝ている時間(7時間とします)を除いた17時間が猫背なのです。

実際はもうちょっと短いけどね。

それなのに、演技の中のたった数十分だけで直すのは、どう考えても難しいですよね。

普段の生活から意識して、1日のうち、「猫背でいる時間」より「猫背でいない時間」を長くしなければいけません。

先ほどの場合、1日のうち9時間以上、猫背じゃない時間をつくらないといけない、ということです。

…と書くと大変な気がしますが、実際に何時間、というのが問題なのではないので、考え方としてそのくらい時間が必要だよ、と思っておいてください。

こればかりは意識し続けるしかありませんが、悪い癖というのは普段から出てしまうものが多いため、逆に言えば練習環境がなくても直せる、と前向きに捉えて頑張りましょう。

また、姿勢の問題であれば、その癖を直すことで、普段の姿勢も良くなり、背が高く見えます。
このように、演劇以外でのメリットがあるものもあります。

普段から演劇レベルの出し方をするのが難しい、声量や表情についても、ある程度は普段から出せるようにすると癖の出方が少なくなります。

ふだん、聞き返されることが多いから、もっと大きな声で喋らなきゃ…。

ただ、演技中でしか出ない癖もあります。普段喋っているときはゆらゆらしないけど、演技中はゆらゆらしてしまう、というような場合ですね。

こういったものは、練習時間中にずっと意識できるよう頑張るしかありません。

ただ、演技中にしか出ないのであれば、「『その癖がある状態』より長い時間、『その癖がない状態』をつくる」のは、むしろ難しくありません。

他のダメ出しにもよりますが、癖は継続的に意識できるようにしましょう。

5.「特長をもつ」ともっと上手く見える

気になるところ、つまり悪い癖がなくなれば、上手い演技と言えるということを説明してきました。

しかし、「気にならない」ということは、「印象に残りにくい」ということでもあります。

もし、人から「演技が上手い」と言われたいなら、もう1つプラスしたいことがあります。

それは、「特長を1つ持つ」ことです。

たとえば、「とても良い声をしている」、「動きにすごくキレがある」、「笑わせるのが得意」など、演技をする上で発揮しやすいことならなんでも良いです。

こういったものが1つあると、その人の「印象付け」になるんですね。

そうすれば、「気にならない」状態より注目度が上がって、「上手い」ことが見えてくる状態に変わってきます。

特長は、さっきの例の「良い声」のように、努力でカバーしにくい才能的なものだったり、もともと得意なことを活かしていくのが良いでしょう。

もちろん、たくさん特長があればそのほうが良いですが、むしろ1つなら「アイデンティティ」になります。

次のレーダーチャートを見てください。

左の「全部がある程度上手い」より、右の「全部が『気になるライン』を超えていて、1つすごい特長がある」方が、上手く見えやすいです。

テレビのドラマに出ている有名な俳優さんも、「この人は表情が面白い」とか、「この人は怒った演技がすごい」とか、大きな特長があることが多いですよね。

全部を良くしようと無理をせず、自分の良いところを理解して、伸ばしていきましょう。

6.まとめ

「上手い演技」の要素の1つは、「気にならない演技」です。

「気になる」ところがある場合、その多くは「悪い癖」です。

癖を直すには、普段から意識できることなら継続的に意識して、「『癖がある時間』より『癖がない時間』を長くする」ようにしましょう。

そして、そこに1つ大きな特長があると、より「上手く」見えます。

「気にならない演技」かつ「1つ大きな特長がある演技」が「上手い演技」と言えるので、そこを目指していきましょう。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。