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どうしたら、上手い喋り方ができるかな。
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3つの抑揚を意識するのがコツだよ。
このページでは、演劇(ストレート)における演技の上達のコツを解説しています。
この記事の結論としては、「声の大きさ、高さ、速さの抑揚を意識すると良い」ということになります。
その理由と、具体的な考え方を説明していきます。
目次
1.演技の要素
ストレートの演劇における演技には、大きく分けて2つの要素があります。それは、「喋り」と「動き」です。
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「喋り」とは、台詞の言い方、間の開け方、発声方法など、お客さんの立場での「聞こえ方」に関するものです。
対して「動き」とは、姿勢、歩き方、表情など、お客さんの立場での「見え方」に関するものです。
この2つはどちらも重要ですが、どちらかと言えば「喋り」の方が大事です。それについては次の記事に書きました。
それでは、大事である「喋り」を良くするためには、どうしたら良いでしょうか。
ポイントは、「喋り」の3つの要素をきちんと意識することです。3つの要素とは、「大きさ」「高さ」「速さ」です。
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「大きさ」とは、声の大きさ(声量)です。
「高さ」とは、声の高さ(音域)です。
「速さ」とは、喋る速さ(早口など)です。
もちろん、この3つ以外にも様々な要素がありますが、特に重要なのはこの3つです。
逆に言えば、この3つさえしっかりコントロールできれば、「喋り」はとても良いものになります。
そして「喋り」は演技における大事な要素なので、それが良くなれば演技自体がぐっと良くなるのです。
ちなみに、言葉がこもらないようにはっきり、そして嚙まないように喋るための「滑舌」については、これらと同じくらい重要ですが、滑舌はあくまで前提と捉えましょう。
滑舌が悪いと何を言っているのかわからず、台詞がメインの情報である演劇においては致命的となってしまいます。
そのため、ここでは滑舌は悪くないことを前提として話を進めます。
2.3つの要素の抑揚をつけよう
さきほど、3つの要素を「コントロールする」と書きました。
「高さ」であれば、高い声で喋るところと低い声で喋るところを上手く使い分けるということです。「大きさ」と「速さ」も同様です。
つまり、コントロールとは「抑揚をつけること」と言い換えることができます。
抑揚とは、文字通り、抑えるところと揚げるところが入り混じっている状態のことです。簡単にいえば「波がある」ということですね。
次のようなイメージです。
![](https://engeki-clip.com/wp-content/uploads/2023/05/e09-3.png)
波があれば、いわゆる「棒読み」ではなくなります。
棒読みじゃなければ上手い喋りに聞こえますが、他のメリットとして、「飽きない」ということが挙げられます。
波があるということは、刺激があるということです。
例えば、普通の調子で喋っていた人が、突然大きな声を出したらびっくりしますね。ただ、やりすぎるとお客さんは不快になってしまうかもしれないので、ある程度の刺激をコンスタントに入れていきます。そうすると、お客さんは不快にもならず喋りに飽きることもなく、ずっと聞いていられるようになります。
波がないと、すぐに飽きてしまい、どんなに良いことを言っていても頭に入ってこず、台詞の意味がなくなってしまいます。
抑揚をつけることで表現力を高める、というのも大事ですが、それはやや曖昧で難しい概念です。
それよりも、抑揚をつけることでお客さんに適度な刺激を与え、飽きさせないようにする、というのがわかりやすく、重要な考え方であると言えます。
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楽しませる前に、そもそも飽きないで見てもらわないとね!
3.抑揚のポイント2つ
3つの要素の抑揚をつけるのが大事ということですが、共通するポイントが2つあります。
- 「基本はこう」を押さえる
- 強調するところを意識する
1.「基本はこう」を押さえる
演技をするとき、声は大きくするべきでしょうか。それとも小さくするべきでしょうか。
当然、大きくするべきですね。
大きさだけでなく、高さも速さも、「基本的にはこうするべき」というのがあります。
具体的には後で説明しますが、「大きく」「高く」「速く」が基本です。
決して難しいことではありませんが、これをわかっていないと、やたらに抑揚をつけすぎて、変な喋り方になったり、台詞が聞き取りにくくなったりしてしまいます。
抑揚をつける前に、基本はどうか、をしっかり把握しておきましょう。
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2.強調するところを意識する
やたらに抑揚をつけすぎてはいけないと書きましたが、ではどうしたら良いかというと、つけるべきところで抑揚をつけるべき、ということになります。
例えば、次のような台詞があったとします。
「ああ、今日も良い天気だなあ。」
このとき、どこを強く言うでしょうか。
多くの人は「良い天気」と答えると思いますが、他にも、気持ち良さを表現するなら「ああ」ですし、何日も良い天気が続いていることを伝えたいなら「今日も」でも良いですね。「ああ」と「良い天気」の両方などでも良いでしょう。
少なくとも、最後の「だなあ」を強調する、という状況はあまりないと思います。(隣にいる人に同意を求める場合等ならあり得ますが…。)
試しに「だなあ」だけ強く言ってみると、変な抑揚がついてしまいがちです。
意図によっていくつかパターンがあれど、強調すべきところとそうでないところがあるので、それを把握し、聞いていておかしくない抑揚をつけるようにしましょう。
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変な抑揚は、悪い刺激になっちゃうんだね。
また、言葉を強調しようとすると、自然と声が大きく、高く、ゆっくりになって、抑揚がつきます。
特に始めのうちは、あまり「抑揚をつけよう」と意識しすぎず、「ここを強調しよう」と意識するとやりやすいかもしれません。
慣れてきたら、抑揚自体をしっかりコントロールできるようにしていくと良いでしょう。
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4.3つの要素を具体的に説明
それでは、3つの要素をそれぞれ具体的に説明していきます。
1.大きさ
まず、声の「大きさ」です。
当然、声は大きくするべきですよね。これは演劇の基本です。
一応説明をすると、演劇は映像作品などと違って、その場の客に声を届ける必要があります。マイクを使う場合もありますが、たいていの場合生の声です。そうすると、たとえ小さい会場でも、普段話している声よりはずっと大きな声を出さないと、すべてのお客さんに台詞が届きません。そのため、基本的には大きい声で喋ります。
では、強調するときはどうかというと、これも大きな声になります。人に伝えたい大事な内容は、大きな声で言いますね。
普段から大きく、そして強調するときはより大きく、これが声の大きさの抑揚の基本です。
しかし、時には小さな声が非常に効果的な抑揚になります。
漫画などで多い演出ですが、ぼそっと言った台詞で場の雰囲気が変わることがあります。
演劇の場合、普段は大きな声で喋るので、さらに小さい声が引き立ちます。
台詞やシーンに応じて、小さい声の抑揚も上手く使えるようになれば、演技の幅が広がるでしょう。
ただし、そもそも台詞をお客さんが聞き取れないと意味がない点に注意しましょう。
大きな声から急に小さな声になると、落差に耳がついていけず、普段から小さい声であるよりもなおさら聞き取りにくくなりがちです。
難しいですが、「小さな声で喋っている感じで、大きな声で喋る」ようにしましょう。
特に、ささやくような、空気を出すような喋り方だとやりやすいです。
あくまで演劇の基本は大きい声ということは忘れないようにしましょう。
2.高さ
声の高さについては、基本的に高い方が良いです。高い方が聞き取りやすい、というのが最大の理由です。
次の記事で詳しく述べています。
強調するときに関しても、高い方が良いです。「大きさ」と同様、人に特に伝えたい言葉はそうなりますよね。
注意点としては、特に女性は、聞いている側の耳がキーンとなるような、高くて鋭い声にならないように、ということがあります。自分だとわかりにくいので、人に聞いてもらうようにしましょう。
もともとの声質も影響してくるので、そうなりがちな人は気を付けましょう。喉の奥を開いてお腹から声を出すイメージや、丸っこい声の形をイメージするのが良いです。
また、「大きさ」と同様、低い声も効果的な抑揚になる場合があります。
内にある強い怒り、というパターンが思い浮かべやすいかと思います。
A「それで、こんなことがあったんですよ!」
B「あはは、それはやばいな!」
A「でしょう? しかも、あいつったら〇〇とか言ってて!」
B「…今なんて言った?」
和やかに会話していたのに、最後の台詞だけ低くどすの効いた声で喋る、というような感じですね。強く印象に残る抑揚になります。
この場合は台詞1文が低く、会話を通しての抑揚となっていますが、文節・単語単位で低くできる場合もあります。
3.速さ
最後に「速さ」です。
これは他2つと比べてややわかりにくく、重要度もやや低いのですが、ちゃんと扱えるようになると演技初心者との差がつけられます。
基本的には、速い方が良いです。
これは先述しましたが、お客さんが飽きないような喋りが大事です。そう考えると、当然遅い方が飽きてしまいますよね。
テレビのドラマよりも台詞が重要な情報源となる演劇では、テンポよく、力強く進行していく会話がベターです。
聞き取りやすさの点では遅い方が良い気がしますが、それよりも飽きるというのは問題ですし、滑舌や発声方法がしっかりしていれば、速くてもちゃんと聞き取れます。
逆に言えば、速さをコントロールするには、滑舌や発声方法をしっかりしないといけないということです。ここが他2つより難しいところですね。
そして、強調の仕方もちょっと違います。
強調する場合は、遅い方が良いのです。
相手に伝えたい言葉はゆっくりしっかり喋ります。ここでは聞き取りやすさが重視されるということですね。
学習塾などの講義で、良い講師は大事なポイントをゆっくり喋ります。そういうイメージです。
4.3つの要素のまとめ
3つの要素の扱い方をまとめると、次のようになります。
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練習するときは、全部じゃなくて1つずつにしよう!
5.まとめ
演技には、「喋り」と「動き」の2つの要素があります。そのうち特に重要なのは「喋り」です。
そして、「喋り」には「大きさ」「高さ」「速さ」の3つの要素があります。これらの抑揚をコンスタントにつけることが大事です。
抑揚をつけるときのポイントは、「基本はこう」というのを押さえておくこと、そして強調するところを意識することです。
基本は、大きく、高く、速く喋ります。
強調するところは、より大きく、より高く、遅く喋ると良いです。台詞によっては、小さく、低くするのも効果的です。
これらのことを意識して、良い抑揚のある喋りができると、演技がぐっと良くなります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。