【演劇】演技のコツ:早口言葉をやるときのポイント

演技のコツ

早口言葉をやれば、滑舌が良くなるよね。

でも、ちゃんとポイントを意識しないといけないよ。

このページでは、演劇(ストレート)における演技の上達のコツ、その中でも早口言葉の練習をするときのポイントを解説しています。

この記事の結論としては、「早口言葉は大きい声でやる」「長期的にやるなら早口言葉をひらがな読みで練習して、短期的にやるなら実際の台詞を暗記で練習すると良い」ということになります。

その理由と、具体的な考え方を説明していきます。

1.早口言葉をやる目的

オーソドックスな演技の練習として、早口言葉があります。

早口言葉とは、例えば「東京都特許許可局」のように、あえて正しく言いにくいように作られている言葉を、正しく・早く言う練習です。

とても良い練習法なのですが、一般的に普及しているが故に、あまり深く考えずにひたすら繰り返され、効果の薄い練習になってしまっていることが多くあります。

野球で言う「素振り」のような基礎練習といえる早口言葉ですが、素振りも適当にやるのではなく、フォームや使っている筋肉などを意識することで効果が増すように、早口言葉もポイントを押さえてやることでしっかり効果が出てきます。

ということで、まず早口言葉をやる目的を確認してみましょう。早口言葉の目的は、

滑舌を良くする

これですね。

滑舌とは、明確に言葉を発するための、口・舌の動きのことです。

滑舌は、演技において一番と言っていいほど重要なことです。
なぜかというと、滑舌が悪いと、ストレートの演劇において最も大事である「台詞」が不明瞭になってしまうからです。

ストーリーは台詞で進んでいくから、台詞がすごく重要だよ。

また、「明確に言葉を発する」ということは、例えば「こんちには」を「おんいてぃわ」と発声してはいけないということですが、他にも、「こ、こんにちは」のように、いわゆる「噛む」「詰まる」というのもいけない、という意味も含むこととします。

そして、目的は「早口言葉を」明確に喋れるようになることではなく、「台詞を」明確に喋れるようになることですね。

「早口言葉が正しく早く言えさえすれば良い」と考えていると、あまり身になりません。

2.早口言葉のポイント3つ

早口言葉の目的を確認したところで、その目的を達成するために意識したいポイントを考えてみましょう。3つあります。

  1. 大きな声でやる
  2. ひらがなを読みながらか、暗記するか
  3. 早口言葉か、台詞か

1.大きな声でやる

実際にやってみるとわかりますが、早口言葉は小さい声でやるほうが言いやすいです。

なぜかというと、小さい声を出すために必要な口と舌の動きは、小さくて済むからです。

小さければ、素早くその音の口と舌の形にできます。

それに対し、大きな声だと、口と舌を大きく変えなければならず、発音に追いつきません。

また、小さい声だと、その口と舌の形にしなくてもその音が出せてしまいます。つまり、ごまかしがききます。

大きな声だと、口と舌をはっきりとその発音の形にしなければその音が出せません。

じゃあ小さな声でやれば言えるようになるね!

それだと練習にならないよ。

演技は大きな声でやるのが基本です。そのため、小さな声で早口言葉が言えるようになってもあまり意味がありません。

早口言葉の練習をするときは、大きな声で、遠くにいるお客さんに届かせることを意識しましょう。

また、口と舌の動きが追いつかず、その音の形になっていないのに発声してしまっているのが失敗の原因なので、素早く正しい形に持っていく必要があります。

まずはゆっくりでも、口と舌を1文字1文字はっきり動かすことで、だんたんと早くその正しい口・舌の形に持っていけるようになります。

早口言葉だからといって、初めから焦らないようにしましょう。

ちなみに、1文字1文字ということは、例えば「東京特許許可局」の場合、「と→う→きょ→う→とっ→きょ」、つまり「お→う→お→う→おっ→お」のように口を動かすことになります。

「とー→きょー→とっ→きょ」、つまり「おー→おー→おっ→お」のようにしたほうが実際の発音に近いのですが、早口言葉はあくまで練習なので、口の形を素早く変えるという目的のためにも、1文字1文字を強く意識しましょう。

2.ひらがなを読みながらか、暗記するか

これもやってみるとわかりますが、漢字などで書いてある早口言葉を読むより、ひらがなで書いてあるものを読みながらやるほうが言いやすいです。

東京都 特許 許可局 許可局長 今日 急遽 休暇許可 却下

とうきょうと とっきょ きょかきょく きょかきょくちょう
きょう きゅうきょ きゅうかきょか きゃっか

さらに、暗記してやろうとするともっと難しいです。
目で見たものをそのまま読む、ということができず、思い出すことに頭をつかってしまうためです。

実際の演技では、台詞を暗記して喋るので、暗記でやるほうが良いような気もします。

しかし、この場合それぞれメリットがあるので、使い分けをしたほうが良いでしょう。

まず、ひらがなを読むほうは、「台詞を思い出す」という余計なことを考えなくて良いので、早口言葉に集中できます。

そうすると、口と舌の動きを「鍛える」という、野球で言う素振りのような反復練習による効果が得やすくなります。

長期的には、こちらの方が良いです。

ただ、この練習をしているうちに暗記してしまい、何も考えなくても言えるようになるので、そうなったら別にひらがなを読まなくても良いです。

しかし、ひらがなを見ながらのほうが、「何の文字を練習しているのか」わかりやすいのと、目で見た文字と口・舌の形がリンクしやすいという多少のメリットがあるので、暗記でやるのと差別化して取り組んでも良いでしょう。

積み重ねるタイプの練習だね。

それに対し、暗記してやる場合は、台詞を思い出すことにも気を遣うので難しくなりますが、やはり本番は暗記した台詞を喋るので、実践的な練習ができると言えます。
実践、つまり本番に向けての練習ですので、短期的な練習と捉えることもできます。

特に、後述するように実際の台詞で早口を練習するなら、より実践的になります。

姿勢や動きなど、他の要素を付け加えてやるのも良いかもしれません。

ただし、考えることが多くなる分、大きな声で口と舌の形をしっかりして喋るという大事なことを疎かにしがちなので注意しましょう。

早口言葉の目的は、あくまで滑舌を良くすることです。

こっちのほうが応用になるね。

3.早口言葉か、台詞か

早口言葉には色々と種類があり、ものによって練習できる文字の並びが違います。

例えば、先ほどの「東京都特許〜」だと、「か」「きゃ」「きゅ」「きょ」あたりが上手く言えるようになります。

しかし、文字の並びはたくさんあり、あらゆる並びに対応できるようになるにはそれ相応の種類の早口言葉を練習しなければなりません。

また、「その早口言葉が言える」ようになっても、それを台詞に還元できないと意味がなくなってしまいます。

長期的に見れば、色々な早口言葉を習得して、色々な文字の並びに対応できるようになれば、難しい台詞も言えるようになってくるので、問題ありません。

しかし、短い期間の間に滑舌などを良くしたいのであれば、早口言葉ではなく実際に演じる役の台詞で練習するほうが良いです。

というのも、結局演技ではほとんど台詞にあることしか喋らないので、台詞さえちゃんと言えれば良いからです。

極端な例ですが、「おはよう、今日はいい天気だね。」という台詞しかない役の人が、「東京都特許許可局〜」を一生懸命練習しても、あまり効果が出なさそうですよね。
「おはよう、今日はいい天気だね。」を、早口言葉のように練習したほうが良いのです。

やるときは、感情を込めたりせず、あくまで早口言葉として、大きな声で口と舌の形を意識してやりましょう。

ただし、台詞は早口言葉のように「わざと言いにくい」文字の並びになっていることはないので、色々な台詞に対応できるようになるわけではありません。

あくまで短期的に、今取り組んでいる役の演技を良くするために行うものだという認識をしておきましょう。

3.まとめ

早口言葉の目的は、滑舌を良くすることです。

早口言葉はただ正しく早く言えれば良いのではなく、目的に近づくため、ポイントを意識してやらないと効果が出ません。

まず、大きな声で口と舌の形を意識してやることが重要です。

また、長期的に役者に取り組んでいくなら、ひらがなにしたものを読む練習で、色々な早口言葉をやると良いでしょう。

短期的に、本番にだけ向けてやるなら、暗記して実際の台詞でやると良いでしょう。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。