【演劇】台本を書くコツ:基本的な流れ

脚本・演出のコツ

台本を書きたいけど、どうしたらいいのかわからない…。

基本的な流れを説明していくよ。

このページでは、演劇(ストレート)における台本の書き方のコツ、その中でも基本的な流れを解説しています。

台本をあまり書いたことがない方や、自己流以外の方法を知りたい方の参考になれば良いかと思います。

手順ごとの具体的なポイントや、実際の書き進め方は、別の記事で紹介します。

1.はじめに

これから、ストレートの演劇における台本の書き方の基本的な流れを説明してきますが、注意点が2つあります。

  1. 演劇の台本であること
  2. ミクロではなくマクロ

1)演劇の台本であること

あくまでストレートの演劇に絞っています。

ストーリーをつくるという点では小説や漫画などと同じなので、それらのセオリーも役に立ちます。
しかし、演劇には演劇の特徴があるので、演劇の台本を書きたいなら、それに特化したセオリーを理解したほうがより役に立つでしょう。

2)ミクロではなくマクロ

台本の面白さの要素は、大きく2つあります。

1つは、ストーリー展開や伏線など、物語全体(マクロ)に関わることです。
もう1つは、台詞の言い回しや、演出方法など、部分的(ミクロ)なことです。

ミクロが知識の積み重ねやセンスが重要なのに対し、マクロは頭を使えばある程度質を上げられます。

どんなに台詞回しが格好良くても、ストーリーがつまらなければ芝居としてつまらなくなってしまうように、基本はマクロをしっかりしないといけません。
そのため、ここではマクロの視点での説明をしていきます。

マクロとかは演劇の専門用語じゃなくて、説明のために使ってるだけの言葉だからあまり気にしないでね。

2.おおざっぱな流れは、アイデア→プロット→下書き

前置きが長くなりましたが、台本を完成させるまでの全体の流れを見てみます。
こんな感じです。

色々あるように見えますが、大きくわけてしまえば「アイデアを出し、プロットを書いて、本書きする」だけです。

プロットとは、全体の話の流れを書いたもので、言わば物語の下書きです。
書き方に決まりはなく、大雑把なものから細かいものまで様々です。

これを作らないでいきなり台本を書き始めると、話があっちこっちにいってしまったり、矛盾や無理が生じたりして、めちゃくちゃな台本になってしまいます。
必ずプロットは書くようにしましょう。

また、プロットを書くにはアイデアを出しておくのが重要です。
この記事では、アイデアマップを使うやり方を紹介します。

3.手順を1つずつ説明

改めて、手順を1つずつ見ていきましょう。

1)柱を書く

まず、台本の「」を書きます。

自分がどんなストーリーを書きたいかイメージして、それを短い文章で表してみましょう。
柱を1つ決めておけば、プロットが書きやすく、話にまとまりが出てきます。

2)アイデアマップを描く

プロットを書く前に、アイデアマップを描いていきます。これが重要です。

アイデアマップとは、出来事や人物のつながりを表現したもので、次のようなものです。

マインドマップという言い方が正しいみたいだけど、ここではアイデアを出すものだからアイデアマップって呼ぶことにするよ。

なぜこれを書くかというと、いきなりプロットを書いた場合、「まずこのシーン、次にこのシーン……」というように、ストーリーが一方通行的になりやすく、アイデアが出にくいうえ、全体の流れが見えないままつくっていくので話の軸がブレやすいからです。

アイデアマップを描くことで、ストーリー全体をつくり、出来事や人物のつながりを持たせておくことで、良いプロットが書きやすくなります。

1.山場を書く

アイデアマップを描くにあたり、まず、山場を書きます

山場を最初に書く理由は2つあります。

まず、山場は、書き手にとって一番イメージがしやすいシーンである場合が多く、書きやすいからです。

もう1つは、山場は物語の目的地だからです。
目的地を定めておくことで、プロットがブレにくく、軸がしっかりしたストーリーになります。

2.アイデアマップを広げる

山場として書いた出来事や人物から線を引っ張り出し、マップを広げていきます。

出来事であれば「なぜそうなったのか?」、人物であれば「誰と関係があるのか?」など、「つながり」を思いつく限り書いていきます。
シーン自体が思い浮かべば、それも積極的に書きましょう。

この段階が一番大事で、難しいところです。
焦らず、頭を使って、アイデアをたくさん出していきましょう。

3.シーンの流れを書く

アイデアマップが描けたら、色ペンなどを使い、シーンごとに囲って、流れを記していきます。

単純に時系列順にシーンを並べても良いですが、過去のシーンを山場の前に持ってきたり、メインのシーンの間にサブのシーンを入れて小休止を挟む形にしたりするなど、シーンの並びの工夫をここですると良いでしょう。

3)プロットを書く

アイデアマップを元に、プロットを書いていきます。

とりあえず最初から最後まで書いてから、ブラッシュアップをしていきます。
ブラッシュアップは、次の3つの視点から行っていきます。

  1. 登場人物
  2. 矛盾の解消(マイナスをゼロに)
  3. つながりをつくる(ゼロをプラスに)

これら3つのブラッシュアップ作業は、相互に関係してくる要素なので、並行して考えるか、何度も見直して修正していく必要があります。

1.登場人物

登場人物の関係性を、相関図で描いてみましょう。

劇中で会話しない人物同士でも、何かしらの関係や印象を書いておくと、人物像に深みが出ます。

また、人物の性格、性別、年齢など、ある程度の設定も書いてみましょう。

ただ、これらは台本の中でつくられていくものでもあるので、あまり固めすぎなくても構いません。

他には、出番が偏りすぎていないかもチェックし、場合によっては出番を増やしたりできないか検討します。

2.矛盾の解消(マイナスをゼロに)

矛盾ツッコミどころを見つけ、減らしていきます。これは、マイナスをゼロにする作業です。

演劇は途中で止まることなくどんどん進んでいくので、小さなものであれば無視しても構いませんが、大きな矛盾やツッコミどころはお客さんが冷める要因になってしまうため、非常に重要な作業です。

また、本書きをしていくときに矛盾に気付くと、行き詰まってしまうことがあります。この時点で解消しておけば、スムーズに本書きを進められるでしょう。

3.つながり(ゼロをプラスに)

もう一つ、つながり伏線をつくるという、ゼロをプラスにする作業もあります。

出来事や人の感情には必ず理由があり、その理由が納得できるものでないとお客さんは「唐突」に感じてしまいます。

特に山場のシーンは、そうなるための出来事や理由が浅いと面白みに欠けやすいので、前のシーンにそれらが用意されているか、よく確認しましょう。

逆に、つながりをちゃんとつくっておくことで、物語の深みが生まれてぐっと魅力が増し、「面白い」と思ってもらえるようになります。

4)本書き(1回目)

本書きは、2回やるのがベストです。

台本は、書いていく中で色々なことが見えてきて、設定やストーリーが固まっていくものです。つまり、前半と後半では書き手の理解度が違ってしまうのです。
そのため、本書き1回目で完成させようと思わず、下書きくらいの気持ちで取り組みましょう。

台本の体裁や、上演時間、細かい喋り方などは気にしないで、とりあえず書ききることが目標です。

ただ、1つ大事なことがあります。それは「舞台をイメージしながら書く」ことです。

これは演劇の台本を書くときに最も重要なことです。これをやらないと、演劇である必要のない台本になってしまいます。

役者の動き・舞台・衣装・音響・照明など、舞台上をできるだけ鮮明にイメージして、イメージの中の役者が喋った台詞を書いていくような感覚で進めていきましょう。

5)印刷してチェック

一度書いたら、印刷してチェックをします。

印刷したほうが書き込みがしやすく、チェックに向いています。

ちょっとした言葉選びから、シーンを丸々削除・追加するなどの大胆な変更も考えに入れましょう。

チェックが終わったら、2回目の本書きです。

6)本書き(2回目)

同じ物語を2回書くというのは中々苦痛ですが、一度書ききって理解度を高めた状態でもう一度書けば、ずっとクオリティの高い台本が書けます。

強くてニューゲームってやつだね。

このとき、1回目に書いたものを編集するよりも、もう一度まっさらな状態から書いた方が良いです。

なぜかというと、編集で直そうとしたところで、結局あまり変わらないことがほとんどだからです。

一度書ききって完成させたものは、愛着が湧き、ちょっとした台詞でさえも変更したくなくなってしまいます。これでは2回書く意味がありません。

無理に台詞やシーンを変える必要はありませんが、理解度が高まった自分の発想力を信じて、2回目の本書きに取り組んでみましょう。

7)その後のチェックや修正

2回目の本書きが終わった後も、もちろんチェックや修正はしましょう。

ただ、それは稽古を初めてからでも間に合うことです。

とりあえずここまでで、一旦台本は完成と言って良いでしょう。お疲れさまでした。

4.まとめ

演劇の台本の書き方(流れ)を紹介しました。

それぞれの手順のより詳しい解説や、実際の書き進め方は、別の記事で紹介していきます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

最後に、流れを載せておきます。