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演技は動きも喋りも意識しないといけないから大変だなあ。
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確かにどっちも大事だけど、まずは喋りを完璧にしよう。
このページでは、演劇(ストレート)における演技の上達のコツを解説しています。
この記事の結論としては、「まずは動きよりも喋りの練習を重点的にやるのが良い」ということになります。
その理由と、具体的な考え方を説明していきます。
目次
1.喋りと動きはどちらが大事?
演技には、大きく分けて2つの要素があります。
- 喋り
- 動き
ここでの「喋り」とは、台詞の発声、間の取り方など、主に声の「聞こえ方」に関わるものを意味します。
それに対して「動き」とは、入り捌け、何かをする動作、何かをしているように見せる動作(パントマイムなど)、姿勢、ポーズなど、役者の「見え方」に関わるもの全体を意味します。
さて、この2つの要素を比べたとき、大事なのはどちらでしょうか。
「人が得る情報のうち、8割は視覚から」ということを耳にした方もいると思います。そう考えると、「見え方」に関わる「動き」の方が大事な気がするのですが、そうではありません。
実は、「喋り」の方が大事なのです。
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どうして?
ある一本の芝居があったとして、次のような状態で感じることを考えてください。
- 目隠しをした状態
- 耳栓をした状態
目隠しをしていると、当然役者の姿は見えません。言葉と、音響だけが聞こえます。
もちろんこれでは面白くないでしょうが、台詞は聞こえてくるので、一体その芝居がどういうストーリーなのか、どんなキャラクターが登場しているのかなどはちゃんと理解できます。
一方、耳栓をした状態では、台詞が何も聞こえません。役者が動いているのと、舞台セット、照明の演出などは見えます。
こちらのほうが情報量が多い気がするのですが、ある大事なことがわかりません。
そう、ストーリーです。
ミュージカルなどならともかく、ストレートの演劇において最も重要なのは、脚本(ストーリー)です。
どんなに良い役者が揃っていても、脚本がつまらなければ芝居として面白くないですし、逆に脚本が良ければ、役者のレベルがいまいちでも面白くなることが多いです。
少し言い方を変えると、「ストーリー」がないと演劇としては成り立ちにくく、「ストーリー」さえあれば成り立つ、ということです。
そしてそのストーリーは、基本的に「台詞」で構成されています。
「台詞」は「喋り」ですから、「動き」だけでは演劇が成り立たず、「喋り」だけだと演劇は成り立つ、つまり「喋りの方が大事」と言えるわけです。
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朗読劇も無声演劇もあるけど、ストレートの演劇は前者に近いね。
2.喋りは骨組み、動きはデザイン
もちろん、「喋り」と「動き」の2つの要素はどちらも大事で、両方を上手く扱える役者こそ、演技の上手い役者と言えるでしょう。
しかし、その両立というのは実はとても難しいことです。
ピアノで言えば、いきなり両手でスラスラ弾くというのは、相当な練習をしないとできないことですよね。
両手で弾けるようになるには、まず右手だけでメロディを練習し、次に左手でベースを練習、そして短いフレーズで合わせていき、最終的には通していきます。ピアノそのものが上達してくれば、いきなり両手でも弾けるようになります。
それと同じように、演劇の練習も、喋りと動きをいきなり一緒にやるのではなく、まず喋りを練習し、次に動き、そして両方を短いシーンで合わせ、最終的には通す、という手順が大事になってきます。
演技自体が上手くなれば、いきなり喋りも動きもそれなりにできますが、それでも、それぞれの要素一つずつに意識を向けていかないと、より良い演技はできません。
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練習には順番がある、ということだね。
ここで、ピアノの例をもう一度考えます。
右手のメロディだけでも曲としては成り立ちますが、これでは物足りません。ベースを左手で作ることで、ピアノの美しい音色を引き立たせ、深みが出ます。
同様に、「喋り」だけでも演劇としては成り立ちますが、それでは演劇らしさがありません。そこに「動き」が加わることで、演劇として深みのあるものになります。
いわば、「喋り」を良くするというのは、演劇を成り立たせるための「骨組み」をしっかりつくるということで、「動き」を良くするというのは、演劇らしさを引き出すための「デザイン」をつくるということなのです。
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3.骨組みは完璧に
ふつう、演劇の稽古は「読み」から始めて、「動き」は後にします。
しかし、ここでありがちなのが、役者全員が台詞を覚えたからと言って、すぐシーン稽古などの「動き」の練習に入ってしまうことです。
「読み」練習の成果(骨組み)が中途半端なうちに、「動き」(デザイン)を始めてしまうのです。
どんなに良いデザインでも、しっかりしていない骨組みに張り付けたら、ガタガタになってすぐボロが出てしまいますね。
「動き」ばかりに意識が向いてしまい、大事である「喋り」がどんどん崩れていってしまいます。
「強風が吹いて外壁が剝がれても、骨組みがしっかりしているため家が崩れない」ように、「本番の緊張やトラブルで動きが悪くなっても、喋りがしっかりしているため演劇がグダグダにならない」のが良いですね。
そのためには、読み練習の段階で、「喋り」を完璧にしなければなりません。
「喋り」で90点以上を安定して採れるようになったら、「動き」に移るようなイメージです。
読み練習は台詞を覚えるための練習ではなく、「喋り」を完璧にするための練習である、ということを忘れないようにしましょう。
ただし、一つ気を付けてほしい点があります。
それは、「完璧にする=かっちり決めきる」ではない、ということです。
演劇はライブ感が最大の特徴ですから、作ったものをただ再生するだけではいけません。
練習で完璧にした「喋り」を、そのまま本番に持ってくると、例えばお客さんの反応に合わせて微妙な喋り方を変えたり、アドリブを入れたりということができなくなり、演劇ならではの面白みというものがない、お客さんを置いてきぼりにする悪い演劇になってしまいます。
イラストでは家で喩えておいてなんなのですが、完璧にしたうえで、柔軟にそれを変えていける余裕を持っておきましょう。
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逆に言えば、余裕を持つために完璧にするんだね。
4.喋りの練習のポイント3つ
では、演技で大事な「喋り」の練習は、どうやってやったら良いかということですが、練習方法自体については基本的に大きな工夫をすることはあまりありません。
結局、「読む」しか方法がないのです。長く読むか、短く区切って読むかの違いくらいです。
少なくともここでは、ふつうに、他の役の人と読み合わせをするという練習方法で考えます。
練習方法より重要なのは、ポイントを把握することです。ポイントは3つあります。
- 台詞を覚えておく
- 感情が不明なところをなくす
- 大きさ・高さ・速さの抑揚
1.台詞を覚えておく
先述したように、読み練習は台詞を覚えるためのものではありません。
台詞が頭に入っていないと、「覚えること」と「間違えずに読むこと」に集中してしまい、「喋り方」まで意識が回りません。
台詞を頭に入れておけば、余裕が生まれて、「喋り方」に意識が向けられます。
台本ができているなら、できるだけ早く覚える。これは鉄則です。
ただし、読み練習のときは無理に台本を外す必要はありません。
むしろ、台本を外して読み練習をすると、今度は「台詞を思い出すこと」に意識が向いてしまいます。
全く頭を使わなくても台詞が出てくるくらい覚えてから臨めば、そのようなことは起こらないのですが、稽古序盤である読み練習でそのレベルまでもっていくのはなかなか難しい、という人も多いことでしょう。
ある程度覚えていれば、台本を見ながらなら「喋り方」に集中できます。これは、覚えていない状態だと文章をしっかり追いかけながら読まないといけないのに対し、ある程度覚えていれば「ぱっと見」で台詞が出てくるようになるからです。
読み練習のときまでにはある程度台詞を覚えておくようにしましょう。
2.感情が不明なところをなくす
何かを完璧にするときは、「わからないこと」があってはいけません。
「わからないこと」があると、何が正しいかわからず、ブレてしまいます。
喋りの場合、「この言葉はどういう感情・意図で喋っているんだろう」という疑問があると、台詞を喋るたびにブレて、聞こえ方が変わってきてしまいます。
自分の中で正解を用意しておかないと、なんとなくで喋ってしまいがちで、安定感がなくなるのです。
現実では、何かを喋るとき、特に何も考えていないことは結構あります。
しかし、演劇の台詞には、「無駄なもの」はありません。どんな言葉にも、感嘆文にも、間にも、必ず意味があります。
これは、演劇が人に伝えるものであること、そして数十分から数時間という短い時間でストーリーを表現するものだからです。
時間が限られているのだから無駄なものは省くべきで、すべての言葉は客に伝わります。
そう考えると、「本当に何も考えずに喋っている」というのは基本的にはなく、すべての台詞に感情・意図があるということになります。
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「無感情」にすら意味があるんだね。
台詞一文単位ではなく、単語単位で、一つ一つ追っていって、「わからないこと」をなくすようにしましょう。
脚本を書いた人や、演出家、他の役者に聞くのも良いですね。
目指すところがはっきりしていれば、読み練習の効果が出てくるようになります。
3.大きさ・高さ・速さの抑揚
喋り方の要素として、次の3つがあります。
- 大きさ
- 高さ
- 速さ
これらを上手く組み合わせてコントロールしていくのが、技術的に非常に重要です。
詳しくは別の記事で書きますが、強調する部分を強く、そうでないところを弱くして、大きな波をつけるのが大切です。
例としては、学習塾の授業で、良い講師は大事な部分を強調して喋ります。そのとき、声を「大きく」「高く」「ゆっくり」喋ることが多いでしょう。
演劇の場合、そういった抑揚をもっと多く使い、また、「小さく」「低く」「速く」することでも強調します。
特に声の高さの抑揚は、聞こえ方に大きく関わる部分ですので、コントロールしていけるようにしましょう。
また、これについてもある程度の正解を用意しておくのが重要です。
喋るたびに変わっていたのではブレてしまうので、「この抑揚の付け方が正解」としたうえで、状況によって変化を付けられるようにしましょう。
ちなみに、抑揚の付け方については次の記事で説明しています。
5.まとめ
喋りと動きでは、演劇を成り立たせるためのストーリーに直結する「喋り」の方が大事です。
喋りは「骨組み」、動きは「デザイン」ですから、「骨組み」は完璧にしておかなければなりません。
完璧にするためには、効果的な読み練習をする必要があります。
台詞を覚えておき、感情が不明なところをなくしたうえで読み練習に臨み、「大きさ」「高さ」「速さ」をコントロールすれば、効果的な読み練習になります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。